廃車の会計処理
車を廃車した場合、実は様々な会計処理が発生します。
主なもので以下がございます。
『車両買取り価格』『廃車手続きに関する諸費用』『自動車税還付金』『重量税還付金』『自賠責保険の返戻金』『リサイクル料金の預託金』等々。
また、個人事業主の場合は家事消費分としての処理がございます。
今回は廃車によって発生するこれらの仕分作業について解説します。
車を購入した時点での会計処理
今回廃車されるお車を購入された際に以下のような処理をしていたかと思われます。
<法人・個人事業主共通>
借方 貸方
車両運搬具 ×× 現金預金 ××
支払手数料 ××
預託金 ××
※現金預金:車を購入した際に支払った金額を記載します。(車両購入対価)
※支払手数料:リサイクル預託金の内、『資金管理料金』のみ支払手数料として費用計上します。
※預託金:リサイクル預託金の内、『シュレッダーダスト料金』『エアバッグ類料金』『フロン類料金』『情報管理料金』を預託金として資産計上します。課税取引とはなりません。
※法人でも個人事業主の場合でも購入時の仕訳は相違ありません。
消費税の処理方法
課税取引の対象となる車両運搬具や支払手数料の経理方法として税込処理と税抜処理が存在します。
税込処理の仕訳では金額も消費税込みで仕訳を切ります。
具体例(税込処理)
借方 貸方
車両運搬具 220,000 現金預金 231,100
支払手数料 1,100
預託金 10,000
税抜処理の場合の仕訳は下記の通りです。税抜処理では課税取引の車両運搬具と支払手数料が消費税抜きの金額で仕訳が切ります。
追加の仕訳として、消費税額を仮払消費税勘定で処理を行ない、ここに車両運搬具の消費税額と支払手数料の消費税を別記します。
具体例(税抜処理)
借方 貸方
車両運搬具 200,000 現金預金 231,100
支払手数料 1,000
預託金 10,000
仮払消費税 20,100
車を売却し廃車した時点での会計処理
車両買取り価格
廃車とはいえ当社ではほとんどのケースで車を買取りしているため、
当社がオーナー様にお金を支払う前提での仕訳処理をご案内します。
また廃車の場合、事故などではない限り購入から6年以上経過して、減価償却で帳簿価額が1円になっている場合もあるかと思います。このような場合、売却代金が少額でも売却益が生じるますので、売却益・売却損の両方のケースでご説明します。
<法人の場合>
■売却益:車両の帳簿価額よりも買取価格の方が高く売却益が生じた場合。
借方 貸方
現金預金 ×× 車両運搬具 ××
預託金 ××
車両売却益 ××
■売却損:車両の帳簿価額よりも買取価格の方が低く売却損が生じた場合。
借方 貸方
現金預金 ×× 車両運搬具 ××
車両売却損×× 預託金 ××
会計処理に慣れていない方のために、具体的数字を使ってご説明します。
車両購入時の仕訳が以下のようになっています。
借方 貸方
車両運搬具 200,000 現金預金 210,500
支払手数料 500
預託金 10,000
車両売却時の仕訳は以下のようになります。
借方 貸方
現金預金 30,000 車両運搬具 100,000
車両売却損 80,000 預託金 10,000
※支払手数料:車両購入時の支払手数料は経費で計上されていますのでここでは無視 できます。
※現金預金:売却時に受け取った金額。(ここでは30,000円)
※車両運搬具:車を廃車・売却するのは、車を購入してから数年以上経過しているでしょうから、減価償却費の計上によって廃車時点における貸借対照表の帳簿価額は減少していきます。(通常は、購入時と売却時で車両運搬具の金額が同額となる事はありません。)
上記の仕訳の例示では、普通自動車の新品の耐用年数が6年ですので、例えば3年後に売却した場合として車両運搬具の価額を100,000としてみました。
※預託金:車両売却時の預託金は購入した時の車両の預託金に紐づいています。車両を売却若しくは除却する際には車両と預託金は一組の資産として貸借対照表から消さなければなりません。そのため、車両の売却や除却の際には同時に消込を行います。
※車両売却損:帳簿上の『車両運搬具10,0000円』と『預託金:10,000円』の合計110,000円から『現金預金:30,000円』を引いた80,000円を『車両売却損』として計上します。
※減価償却について:上記では法定耐用年数6年、償却方法:定額法 3年経過後に売却の場合として、車両運搬具の帳簿価額を100,000としました。車両は法人の場合、原則とし定率法での償却となりますが、そこまで前提を広げるとかえって分かりにくくなるため上記の前提で説明させていただきました。
中古資産の耐用年数は、当該車両の購入時における経過年数によって異なります。
計算式は下記の通りです。
- 法定耐用年数を全部経過した資産:法定耐用年数の20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:その法定耐用年数から経過した年数を引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数
※計算結果の1年未満は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。
自動車の場合の例示は下記の通りです。
①耐用年数の全部を経過した場合
6年×20%=1.2年→2年
②耐用年数の一部を経過した場合
6年―3年+3年×20%=3.6年→3年
※消費税について:売却対価が消費税の課税売上。今回の例で言えば、30,000が課税売上となります。
間違っても車両運搬具の帳簿価額や車両売却損の金額を消費税の課税売上や課税仕入としない様にご注意下さい。
預託金については、消費税法上は有価証券譲渡となりますので、預託金相当部分の10,000のうち5%が非課税売上となります。
<個人事業主の場合>
売却の際は法人、個人事業主で仕訳が異なります。
(売却益)
現金預金 ×× 車両運搬具 ××
預託金 ××
事業主借 ××
(売却損)
現金預金 ×× 車両運搬具 ××
事業主貸 ×× 預託金 ××
個人事業主の場合、売却損益は譲渡所得(総合課税)となります。
そのため、仕訳上では売却損益を認識しない事となるので、売却益が生じた場合には「事業主借勘定」で処理をし、売却損の場合には「事業主貸勘定」で処理を行います。
法人の場合の車両売却益が事業主借、車両売却損が事業主貸に置き換わったものとして処理します。
当社が中古車として買取りした場合
当社では買い取らせていただいた廃車を手直しして中古車として再利用させていただきます。
その場合はリサイクル料金を返金させていただきますのでその場合は以下のようになります。
車両購入時の仕訳が以下の場合。
借方 貸方
車両運搬具 200,000 現金預金 210,500
支払手数料 500
預託金 10,000
車両売却時の仕訳は以下のようになります。
借方 貸方
現金預金 40,000 車両運搬具 100,000
車両売却損 70,000 預託金 10,000
自動車税還付金の会計処理
原則4月1日の時点で車の所有者となっている方が還付金を受け取ります。
自動車税を納付した時点での会計処理は以下になります。
借方 貸方
租税公課 ×× 現金預金 ××
廃車手続きを済ませ、還付金を受け取った際の仕訳は以下になります。
現金預金 ×× 雑収入 ××
なお、軽自動車では自動車税の還付制度はございません。
重量税還付金・自賠責保険の返戻金の会計処理
車検を受けた際に自動車重量税と自賠責保険料を支払います。
この時の会計処理は以下になります。
借方 貸方
自動車重量税:租税公課 ×× 現金預金 ××
自賠責保険料:支払保険料 ×× 現金預金 ××
当社の場合、車の名義を当社に変えて廃車手続きを行ない、重量税の還付金・自賠責保険の返戻金を当社が直接受け取るため、これらの還付金を車両買取り価格に上乗せしてお支払いしています。
従いまして、オーナー様におかれては特に経理処理をする必要はございません。
リサイクル料金の預託金の会計処理
車を購入する時にお支払いされたリサイクル料金ですが、これは車を廃車・解体するための諸費用に充当されるため、車を廃車する場合は返金されません。中古車として転売される場合のみ、新たな所有者(その車を購入した人)が、旧所有者(その車を売却した人)へ支払うことになっています。
よって、資産に計上されている預託金(『シュレッダーダスト料金』『エアバッグ類料金』『フロン類料金』『情報管理料金』)を貸方に計上して貸借対照表から消込を行っていただきます。
最後に
このコンテンツを作成するにあたって当社の顧問税理士さんには大変お世話になりました。税理士さんから教わった内容を筆者なりにかみ砕いてコンテンツにしました。勘定科目は当社で使用している言い回しになっています。
2020年11月11日
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